技術資料(1)
材料の強さ(埋め込みアンカーボルト)
材料に次第に力を加えていくと変形し、やがて破壊する。弾性限界、荷重の種類、応力を次に示す。
① 弾性限界

・弾性限界内では力と伸びが、ほぼ比例する。
・弾性限界を超えると永久歪み(ひずみ)ができて元に戻らない。
・最大応力を超えると耐えられる力が小さくなりやがて破断する。
②荷重の種類
荷重の掛かり方
・静荷重 :静かに掛かる荷重(載せる)
・動荷重 :変動する荷重 (ゆさぶる)
・衝撃荷重 :衝撃的に掛かる荷重(たたく)
※静 → 衝撃の順で弱くなる。
荷重が掛かる時間
・短期荷重 :短期間掛かる荷重
・長期荷重 :長期間継続して掛かる荷重
※短期間ならば耐えられる荷重は大きい。
③せん断応力と引っ張り応力
材料に対する荷重の加わり具合については、次の様なものがある。
・せん断:材料をはさみで切るように加わる力。
・引張り:材料を引きちぎるように加わる力。
・圧縮:材料を押しつぶすように加わる力。
・曲げ:材料を曲げるように働く力。
・ねじり:材料を捻じ切るように働く力。
ボルトなどで最も多く検討対象となるのはせん断と引張りである。
この力に対する強さは材料の断面積に比例する。この強さを許容応力と言う。
下表に基礎ボルトの許容応力の計算例を示す。 (単位 kg) (計算の根拠はJEM-TR144-1985による)

一般構造用鋼材SS41
※長期許容応力:引っ張り=12kg/mm2 せん断=9kg/mm2
※短期許容応力:引っ張り=18kg/mm2 せん断=13.5kg/mm2(長期の1.5倍)
※引っ張りとせん断が同時に働く場合はJEM-TR144-1985参照
※基礎ボルトがコンクリートに埋め込まれる場合は、ボルトの引き抜き荷重を検討すること。
(コンクリートの引き抜き荷重は上表より小さい)
※JISに 基礎ボルト の規格があるが、ここではJEMによった。
④応力の集中
急に断面積が変化する部分には応力が集中する。通常より弱くなる。

◎このような力が加わらないように注意する。
盤の耐震性 (JEM-TR144-1985)
地震が発生すると盤の重心に盤の重さに比例する力が加わる。
この時、盤の移動、転倒、脱落が起こらないように盤の基礎ボルトや取付ボルトを設計しなければならない。
地震加速度=水平方向0.3G:垂直はこの1/2で、この両方が同時に不利な方向に加わるものとして検討しなければならない。
盤の重心に加わる力=地震力×建築物床応答倍数×盤の応答倍数
・建築物の床応答倍数は構造と設置階数で変化し最大で3.3である(高い階→大)
・盤の応答倍数は固有振動数で変化する値で最大2.5である。
すなわち、最悪の条件では盤の重心には水平方向で 自重の0.3×3.3×2.5=2.48倍の荷重が掛かる。
この力は基礎ボルトや取付ボルトに加わる。
①Phによるせん断力とPvによる引張り力に耐える必要がある。
②さらに下図に示す様に盤を転倒させる力にも耐えなければならない。


最大水平地震力 Ph = 2.48W
最大垂直地震力 PV = Ph / 2=1.24W


①盤内機器に対しても機器重量の水平2.48倍、垂直1.24倍の荷重が加わる。
②盤は基礎ボルト(取付ボルト)間隔をなるべく離して(Lbを大きくする)配置する必要がある。
③基礎ボルトは曲げ荷重が掛からない構造にする[押さえ板(床上3~5mm)で根元を抑えるなど]
配線のノイズ対策
①シールドケーブル
・心線が非ツイストで良い場合はマイクロフォンコード(MVVS)が良く使われる。
・心線もツイストの場合はツイストシールドケーブル(各種あり)を使う。
ケーブル内の対(ペア)単位でツイストし、各ペアのツイストピッチは異なる。
※シールドは、片側だけを接地する(機器のアースに接続し機器をアースする)
:両側を接地するとループができて、アンテナになってしまう。
:接続個所ではシールドも接続し、全体で1本になるようにした上で片側を接地する。(ノイズフィルタなどのノイズ分離機器を除く)
※シールド部分を剥き過ぎない様に注意する事。シールドを剥いた部分はノイズを防ぐことができない。
②電線のツイスト(ツイスト:1対の電線を撚り合わせること)
ノイズを他に伝えない、受け取らないために、同一回路の電線 2本又は3本でツイストする。
・隣接した他の電線に対して誘導するノイズの極性を正負の両方出すことで他の電線内でノイズ同士を打ち消す。
・隣接した電線からノイズを受けた場合、ツイスト線の両方に同一極性のノイズを受け回路全体でノイズ同士を打ち消す。

※dB(デシベル):db = 10 log10 P1 /P2 P1:送話側電力 P2:受話側電力
・電線のツイストは1mあたり10回で-20dB 20回で-40dBの効果があると言われる。
・30mmピッチのツイストでノイズ周波数ごとの効果はノイズ周波数1MHzのとき-100~-120dBであると言われる。
10MHz で-70~-80dB、 100MHzで-50~-60dBの報告もある。
・KIVでは電線の仕上り外形をdとした時、ピッチ= 10d ~ 18d にするのが適当と言われる。
・同じピッチのツイスト線同士ではノイズ防止にならない(ピッチが同一の場合、ツイストにしない場合と同じになる)
・ツイストワイヤ同士では両方が同一ピッチにならなうように各電線のピッチ比を1:2ぐらいにする必要がある。
Aのペア線は25mmピッチ Bのペアは50mm などにする。
※ピッチが小さいほど効果が高いが、あまり短いピッチでは電線の被覆に無理が掛かる危険がある。
JISの低温巻きつけ試験では仕上り外径の3倍で試験するが、ケーブルの例では 8d以上である。
10d ~ 18dとした場合のピッチの計算結果を次に示す。
KV 0.3Sq 15~27mm 0.5Sq 19~34mm 0.75Sq 21~38 mm
IV 0.9Sq 28~50mm 1.25Sq 31~56mm 2 Sq 34~61 mm
③ その他
・ノイズ防止の接地線は太く短く(長いほど太く)する。
※IVより素線数の多いKIVが良いと言われる。(ノイズ周波数が高いと表皮効果が大きくなる為、素線数が多いほうが良い)
※ノイズが強い場合は5.5Sqも使用する事がある。接地母線からは14Sq位で接地する。
・弱電の信号回路は、主回路やノイズ発生源の電線と100mm以上離すか、ダクトの外を配線する。
(ダクト外配線と100mm離すことが同じ効果と言う意味ではない。盤内で100mm離す事は困難なため、同一配線ダクト内より
マシなダクト外配線にする)
ただし、これらの電線との直交(直角に交差する)は許される。
・ノイズフィルタの一次と二次の配線は経路を変えて必ず離隔する(一次配線と二次配線間で直接ノイズが伝播することを防止する)
導体
①導体の材料
一般に導体に使用される金属は「銅」と「アルミニュウム」である(電気器具では黄銅や鋼材等も使われる)
・電気用1.6φ線の比較を下記に示す。

※アルミは重量で銅の約30%、電気抵抗で約1.6倍
※電線に加工された場合の抵抗は上表の値とは異なる。
・盤内で使用される電線は、ほとんどが「銅」導体である。
・導帯(ブスバー:バスバー)の場合は、主に「銅」であるが、「アルミ」も用いられる。
※ 銅とアルミを直接接続すると「電蝕」が発生する。
※ また、アルミは短時間で表面に「酸化アルミ」の皮膜を形成するため、接触抵抗が大きくなり、使用できなくなる。
これらを防止するため、アルミ表面を研磨後、酸化する前に特殊な「ペースト」をアルミ導体に塗布する必要がある。
※銅の価格が高騰した時期は「アルミ」導帯も使用されたが、取り扱いが面倒な為、現状では大電流用や軽量化が必要な場合
以外は、あまり使用されていない。
②「銅」導帯の電流密度

注)官庁(公共建築工事標準仕様書)
※1.材料の面取りおよび成形のため、電流密度は±5%の裕度を認める。
※2.導体の途中にボルト穴の類があっても、その部分の断面積の減少が1/2以下である場合は、これを考慮しなくても良い。
※3.電流容量によって電流密度が異なる理由は大電流になるほど表皮効果などが顕著になるため。
・表皮効果とは導体の自己インダクタンスによって、導体表面付近の電流密度が高く、
中心付近の電流密度が低くなる現象を言い、100sq以上で考慮する必要があると言われ、
周波数が高くなるほどこの現象が顕著になる。
導体の形状は、円形の導体より、矩形や素線数の多い電線の方が影響が少ないと言われる。
※4.分電盤の方がキュービクルよりも電流密度が小さく定めてある(導体が太くなる)
③母線、分岐用絶縁電線の最小太さ(IV電線の場合)(JISC8480 (*)は官庁のみ)


注)官庁(公共建築工事標準仕様書)官庁の周囲温度は40℃
JISの盤の温度範囲は-5℃~+40℃ 24H平均で35℃以下で内線規定などの基準温度とは異なっている。
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