電路・負荷保護(2)
低圧幹線の過電流保護器の施設
低圧の太い幹線から細い幹線を分岐する場合の過電流保護器までの長さは次による。(内線規定 1360-10)
・この場合の許容電流は「がい子引き」の値とする(がい子:碍子:磁器製の電線支持物)
・電線保護は、短絡のみを考慮している。
・電線の太さが単一、太さの異なる電線を接続した場合の電線太さと長さの関係を下表に示す。


・55%以上、35%以上の許容電流を持つ電線のサイズ 最高許容温度60℃の例

モーター保護
①過負荷保護
モーターの特性に合わせた保護装置を用いる。
※モーターブレーカー、サーマルリレー+電磁接触器、静止形保護継電器など。
◎機械自体を保護するために瞬時過負荷を検出するショックリレーもある。
②欠相保護(単相運転保護)
・欠相とは3相で給電すべき回路が、単相で給電する状態になることを言う。
→通常の数倍の電流が継続して流れ、電路、モーターともに焼損する。
・欠相保護は欠相保護付きサーマルリレー、欠相保護機能を持つ保護継電器と電磁接触器または遮断器を組み合わせて用いる。
③逆相保護
・モーターが逆回転するような相の接続状態を言う。→ 機械の破損、モーターの焼損
・逆相が検出可能な継電器と電磁接触器を組み合わせて保護する。
電動機の主幹ブレーカー容量
内線規定、富士電機、三菱電機の主幹ブレーカー容量を下記に示す。C

電動機回路の配線
① 200V 三相誘導電動機 1台の場合の 分岐配線(銅線):内線規定 3705-1表

※ 内は内線規定、官は公共建築工事標準仕様書(16年版)
※三菱(三菱電機)、富士(富士電機)では、直入れとYD(スターデルタ)始動による差はない。
※配線用遮断器の定格電流は、電線保護用でモーター保護用に別の保護器があるものとしている。
※配線はモーター電流50A以下で1.25倍、50A超過では1.1倍以上の許容電流を持つ電線を使用する事。
②電動機の規約電流 (A) 内線規定 資料3-7-3

※規約電流値はJISで規定する電動機の最大のもの(全閉6極など)
※異なる電圧(E)、標準電圧(V)のとき、Eにおける電流はV/E倍する。例200/220=0.91
三相交流モーター(かご形モーター)のスターデルタ始動
※始動時に流れる大電流によって、電圧降下が大きくなりモーターそのものや他の回路に悪影響を及ぼす。
そのため各種の始動方式があるが一般的にはスターデルタ始動が最も多く使用される。
:スターデルタ始動では始動電流、トルク共に (1/√3)2 = 1/3になる。
※原則として3.7kWを超えるものは始動装置が必要である(11kW以上ではほとんどの場合、始動装置が必要)

◎始動順序
1)McY ON
2)McM ON
3)起動時間
4)McA ON
5)McY OFF
6)切替時間
7)McD ON
8)McA OFF
注)〇〇%は電線の許容電流(細い電線を使用できる)
各電磁接触器は小さな容量の物を使用することができるが電線の接続が可能かどうか注意する必要がある。
※上図の破線内はクローズドトランジション方式の場合を示す。
(クローズドトランジション :スターデルタ切替時の突入電流を防止するため抵抗器によって開路状態を防止する方式と言い
切替時のショックを嫌う場合に用いる。これと対比して普通のスターデルタを、オープントランジションと呼ぶ場合もある)
※上図でMcAが無いものを3電磁接触器方式(スリーコンタクタ)と言う。
さらにMcMを省略したものを2電磁接触器方式(ツーコンタクタ)と呼ぶ。(モーター停止中も電圧が加わるため推奨されない)
※モーターが自動運転の場合は、3電磁接触器方式にする(内線規定3305-2-2注 参照)
※スターデルタ始動ではスターからデルタへ切り替わる際に0.5秒程度の間、電動機が無電圧となり、電動機が発生する電圧と
電源電圧の位相差によって、デルタ用電磁接触器がONした瞬間に十数倍の大電流が流れる場合がある。
※ McYにいたる電線は主回路電線の35%以上の許容電流を持った電線を使用することができる。
※スタ-デルタ始動の始動時間の例を下表に示す。
負荷の種類 | 電動機の始動時間(秒) |
ポンプ・ファン(換気ファン、パッケージ) | 3以下 |
ポンプ・ファン | 3~6 |
送風機など起動時間の長いもの | 6~10 |
※スターデルタの他に、抵抗、リアクトルなどを用いた始動方法もあるが一般的でないため省略する。
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