電気のおさらい(4)

目次

電気のおさらい(1)

  1.電気と磁気、電界と力

  2.皮相電力、有効電力、無効電力、力率

  3.電磁的平衡

  4.電磁誘導とうず電流、ヒステリシス損

  5.発電

  6.交流の波高値、平均値、実効値

  7.電気の単位

  8.単位に付ける倍数

  9.温度

  10.導体、半導体、絶縁体

電気のおさらい(2)

  11.抵抗器(レジスタ)

  12.コンデンサ(キャパシタ)

  13.コイル(インダクタ)

  14.相と線(交流の場合)

  15.発電、送電、配電

  16.電圧の区分

  17.電圧降下

電気のおさらい(3)

  21.変圧器の原理と分類

  22.三相変圧器と単相変圧器の構造の違い

  23.変圧器の定格容量

  24.変圧器の並列接続(並行運転)

  25.変圧器の直列接続

  26.単相変圧器の三相接続

  27.変圧器の電圧変動率

  28.計器用変成器

  29.交流モーターの特性

電気のおさらい(4)

  31.ダイオードと整流器

  32.整流回路

  33.トランジスタ

  34.サイリスタ

  35.トライアック

  36.光制御素子

  37.表示灯

  38.論理記号、論理式とシーケンス

  39.2進数、2進化16進、2進化10進数

一般知識(1)

  41.ビルの電気設備

  42.単線接続図(スケルトン:Skeleton Diagram)

  43.電気シンボル

  44.盤の種類

一般知識(2)

  51.操作、表示器具の方向および色と配列

  52.器具の取り付け方向

  53.絶縁距離

  54.絶縁保護板とアークスペース

  55.電線と器具端子の接続

  56.相配列

  57.相色別

一般知識(3)

  61.導体の許容電流はどのようにして決められるか

  62.電線の並列接続

  63.電線サイズとガタースペース

  64.ねじ

一般知識(4)

  71.アンカーボルトの種類

  72.吊りボルト(アイボルト)

  73.板金

  74.メッキ

  75.塗装

電路・負荷保護(1)

  81.電線路の保護(電線路:電線、ケーブルなど)

  82.モーター保護(交流誘導電動機)

  83.漏電保護

  84.制御回路の保護

電路・負荷保護(2)

  91.低圧幹線の過電流保護器の施設

  92.モーター保護

  93.電動機の主幹ブレーカー容量

  94.電動機回路の配線

  95.三相交流モーターのスターデルタ始動

ダイオードと整流器

半導体素子の一種で、交流を整流(極性が変化しない形にする)する働きがある。

・ダイオードと整流器は、同じものであるが、主に交流を整流して直流にするものを整流器と呼ぶ場合がある。

・P型半導体とN型半導体が原子レベルで接合された状態に作られる。

・P型半導体:半導体に微量のホウ素、ガリウム等を混ぜ、電子不足にした半導体

・N型半導体:半導体に微量のリンなどを混ぜ、電子過多にした半導体

※下記の矢印の方向に電流が流れ、逆方向には流れない(実際には逆方向に微少な漏れ電流がある)

      


※ダイオードは極性を間違えると、短絡状態になり、ダイオードや器具を破損するので注意すること。

整流回路

主な整流方式を下図に示す。



整流回路の変換公式

凡例)

Em:直流電圧(平均値:V)

E :直流電圧(実効値:V)


Ee :変圧器二次電圧(V)  [単相半波の場合は中性線と電圧線]

Ir :整流素子電流(実効値:A)


Ie :変圧器二次電流(実効値:A)

Im:負荷電流(平均値:A)


f :周波数(Hz)


注) 波形率 = 実効値/平均値

脈動電圧(リップル電圧)= 最大電圧-最小電圧

脈動電圧率 = 脈動電圧 / 平均電圧



◎ 上表は理想状態を示すため、実際の出力電圧は下記の様に補正する必要がある。

・整流素子の順方向電圧降下を見込む事。

・無負荷時0.5~0.7V程度、全負荷時0.6~1V程度(温度でも変わる)

(全波整流では直列に2個の素子で電圧降下が生じる為、この2倍)

・変圧器の電圧変動を見込む事

・電圧変動率は1.2~2%程度

※直流側にコンデンサが入っている場合は無負荷時と全負荷時では大きな電圧変動が発生する。

・無負荷時は交流側の波高値まで電圧が上昇する。

・全負荷時は負荷状態とコンデンサの容量に見合った状態まで電圧が低下する。

※負荷のLCRによって波形が歪むため実際の測定電圧とは多少異なる。

※センタータップ整流、平滑回路、倍電圧整流回路などは安定化電源の発達で、盤ではほとんど使用されなくなったので省略する。




ダイオードの特性と進化

ダイオードの逆方向には、電流が流れない?

  ・定められた逆電圧以内でも、わずかの漏れ電流が流れます(約100kΩ)

   これは半導体一般に共通な現象です(半導体は絶縁体に比べ漏れ電流が大きい

ダイオードに電圧降下は無い?

 ・微少電流でも一定の電圧が降下します→順電圧降下と言います(0.6 ~1Vぐらい)

  さらに電流が増えると順電圧降下+電流に応じた電圧降下が生じます。

  ダイオードの温度でも変化するためカタログの特性図を参照する必要があります。

逆方向に加えた電圧を高くしていくとどうなる。

 ・ある電圧を超えると、突然大きな電流が流れるようになります。このときの電圧を

  ブレークダウン電圧と言います。

  この状態でも電流が小さく短時間であれば素子は壊れませんが寿命が短くなります。

  この作用を利用したものに定電圧ダイオードがあります。

周波数が高くなると

 ・一般の整流用ダイオードでは、周波数が高くなると整流作用がなくなってしまいます。

  周波数に見合った種類のものを選択する必要があります。







整流器の進歩

大容量→ 水銀整流器(ガラス管の中に封入した水銀と電極間の放電で整流する)

小容量→ 亜酸化銅整流器(銅表面と亜酸化銅皮膜間の整流作用を利用)

小容量→ セレン整流器(鉄又はニッケル板上にセレニウムを融着し鉛を吹き付け)

 いずれもシリコン整流素子の登場で、現在では特別な用途以外ほとんど使用されていない。

ダイオードの進歩


 初期の「ゲルマニウムの接触型」から「シリコンの接合型」へと材料、構造ともに変化してきた。


トランジスタ

◎トランジスタにはPNP型とNPN型がある。(PはP型半導体 NはN型半導体)


  PNP型:エミッタP ベースN コレクタP       

  NPN型:エミッタN ベースP コレクタN  


  矢印の|への接する向きで見分ける



・PLC(シーケンサ:PC)などの出力は、ほとんどがNPN型であるためNPNについて説明する。

Ibが流れるとC-E間がON状態になる。

Ibが流れないとC-E間がOFFになる。



例)低周波増幅トランジスタの場合

Ib 1mA~

Ic 20mA~

※PLCではC-E間の抵抗は

ONで数Ω

OFF時 数百kΩ程度

※ONで抵抗がゼロになる訳ではない。


※PLCの出力トランジスタは出力電流が非常に小さいためどの程度の負荷を駆動できるか、カタログで確認すること。

 (一般に大形のリレー、電磁接触器などは直接駆動できないと思っていた方が良い)


トランジスタの記号の始まり

最初に発明されたトランジスタは、ゲルマニウムの表面に2本の針を50μm間隔で接触させた構造であった。

そのため、現在でも記号としては、板と二本の針を組み合わせた形状がそのまま使用されている。

現在のトランジスタは「接合型」と呼ばれる構造である。またゲルマニウムに変わってシリコンが用いられている。

  ※その他の素子

  トランジスタ以外にも増幅、制御用の半導体素子には次の様なものがある。

  FET(電界効果型)トランジスタ(CMOSなど)、サイリスタ、トライアック、GTOサイリスタ

  フォトトランジスタ、UJT、フォトダイオードなど

サイリスタ (制御整流素子:SCR Silicon Controlled Rectifier)

・サイリスタはダイオードに制御部を取り付けたような構造を持つ。

・インバータなどの制御を含んだ整流回路に用いられる。

・ゲートに電圧を加えなければ導通せず、ゲートに電圧を加えるとONするが、一旦ONするとゲート電圧をOFFにしても

OFFしない。A-K間電流がゼロ(実際には保持電流以下)になるとOFFする。

・ONは通電開始角を制御しOFFは強制的に保持電流以下にするか、電流がゼロになるまで待つ。


                                             
・通電開始角を制御して通電時間(整流時間)を変えるのが最も簡単な使用方法である。

・小型のものをシーケンス制御回路の多重故障受信用に用いた例もある。

トライアック(Triac:別名 双方向性3端子サイリスタ)

・サイリスタを二個並列に接続した構造を持ちソリッドステートリレーやソリッドステートコンタクタ、調光器、電気コタツなどの交流回路の

直接制御に用いられる。

・T1,T2を主回路とし、ゲート(G)に電圧を加えるとT1,T2間がONする。


・一旦ONすればゲートと関わり無く電流がゼロ(保持電流以下)になるまでOFFしない。

・交流では電流ゼロの瞬間にOFFするのでONを継続するためには、次のサイクルでゲートをONする必要がある。



※通電開始角(θ)を変えることによって負荷に対する通電時間を変化させ実効値を変える。

※ほかにGTOサイリスタ(Gate Turn Off thyristor)または(GCS:Gate Controlled Swith)がある。

(名前は違っても同じものである)

これはゲートに(+)を加えるとONし(-)を加えるとOFFすることが出来るサイリスタである。

光制御素子 いずれも「光」や「写真」を意味するフォトが頭に付く。フォトをホトと書いている本もある。

①フォトダイオード(Photodiode) 

 受光部に光があたると、逆方向の阻止電圧が下がり導通状態になる。



     


②フォトトランジスタ、フォトサイリスタ、フォトトライアック

・光によって制御可能なトランジスタ、サイリスタ、トライアックなど

・いずれも制御入力を「光」またはフォトダイオードで行うものである。 



③フォトカプラ

・発光ダイオード(LED)とフォトトランジスタを組み合わせて一体化したもので、電子回路で入出力を絶縁したい場合に

用いられる。

※光を使用するため一次と二次が絶縁され、ノイズに強いのが特長でPLC(プログラマブルコントローラ:シーケンサ:PC)

などの入出力素子として使用される。

この構造でLEDとフォトトランジスタの中間に溝を設け遮光、透光させればフォトインタラプタになる。




◎ 半導体素子のパッケージ

  主なパッケージの形状を下図に示す。ネジ形以外はプリント基板に取り付けて使用される。

  ネジ形は放熱フィンに取り付けて使用する。

表示灯

①発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)

  ・ダイオードの一種で、電流を流すことで発光する。

   ※電流で発光する。各種のランプ色は主にLED自体の発光色である。

  ・極性がある。

  ・電流は1素子あたり 5mA ~ 50mA程度(メーカーの推奨値を参照すること)

  ・発光色が青色のものは、発光性能が悪い(緑に近い)物もある(メーカーによって異なる)

  ・赤色の電流値は小さく、緑色は赤の1.5~2倍ぐらいの電流を流すものが多い(最近は同じ電流値のものも多い)

   ※電流を制限するために、直列に抵抗を接続して用いる。

   ※抵抗を共用にした場合、なるべく直列接続で使用する。

    並列使用時には各素子の製造ロット毎の順電圧降下のばらつきで、LEDの明るさに違いが出やすい。


 

 1.2~5V(順電圧は種類や色によって異なる為、使用するLEDメーカーのカタログを参照すること)




LEDの電流制限用抵抗器の決め方

     R=(V-VL)/I

  R :抵抗値 (Ω)                I :抵抗に流れる電流(A):If+If+・・・

  V :電源電圧(V)                If :発光ダイオードの推奨順方向電流(A)

  VL:順電圧降下の合計(V):Vf+Vf+・・・     Vf :発光ダイオードの順方向電圧降下(V

 

  ※LEDの寿命は半永久と言われているが、製造上のストレスや過電圧、逆電圧、温度等の影響で寿命が短くなる。 

  (識者によれば、電流を適切に選定すれば赤色で15年、緑で7年程度は大丈夫との事)

  ※順電圧降下は順電流の大きさや発光色によって変化するため注意が必要である(赤が最も小さく、緑,青の順に大きくなる)




②白熱電球

   ・フィラメント(しん)を持った電球で極性は無い。

   ・電圧、ワット数が定格で定められている。電流は0.1Aから数十アンペア

   ・色はフィルターで決める。「緑」は光度が低く、青は困難(緑がかった青になる:もともとの発光色が黄系統なため)

   ※点灯時、瞬間的に10倍ぐらいの突入電流が流れる(1~2サイクル)

   ※ソケットの形式で「エジソン型」「スワン型」「航空器用」等がある。

   ◎表示灯用電球の寿命は6.3V用で5,000時間、18V用で1,000時間程度であるが、他の用途で特殊なものでは1万~10万時間の

   ものもある。

   ◎寿命を長くするためには定格電圧の85% 程度の電圧で使用する。(または点灯させる電圧の1ランク上の定格電圧の電球を使用する)




③ネオン球

   ・ネオンガスをガラス管に封入した放電管

   ※低い電圧では放電しない(放電開始電圧は100V定格のもので60~75Vぐらい)

   ※直流で使用すると片側の電極だけが発光するので交流の約1/2の明るさになる。(ほとんどのものが交流用である)

   ※微少電流で発光する。μ~mアンペア級

   ※色は赤、黄、橙でネオンガスの放電色で決定される。

   ※LEDと同様に直列抵抗が必要全ての放電管は電流制限が必要

   ※寿命は10,000~30,000時間程度(24時間点灯で833日)

論理記号、論理式とシーケンス


名称略号内容論理記号シーケンサ
論理和OR入力のいずれかが1の時
出力が 1
これ以外は0
論理積AND全ての入力が
1の時出力が1
これ以外は0
否定NOT
(ノット)
入力が0の時
出力が1
これ以外は0
排他的論理和EXOR(Exclusuve-OR)
(エクスオア)
全ての入力が
同一でないとき
出力が1
これ以外は0
保持(記憶)入力が1の時
出力が1になり
その状態を保持
※  1.出力部にNOTを入れて出力が逆になる様にしたNOR(ノア)、NAND(ナンド)、EXNOR(エクスノア)がある。これらは、「N」が付く(論理素子に多い)

2.入力、出力が「1」とは一般的には電圧が「H」レベルを言い「0」とは「L」レベルを言う。

ただし、この逆を通常とする負論理もある(電子回路など)

(本来の論理では「真」(True:トウルー)、「偽」(False:フォールス)を1,0やH,Lで表したものである)

3.論理の追加説明

論理和

足し算に相当する。

1+0=1  
0+1=1  
1+1=1(2は0より大きいので1)  
0+0=0

論理積

掛け算に相当する。

1×0=0  
0×1=0  
0×0=0  
1×1=1


排他的論理和

入力の比較と考えても良い。同一のとき0で同一以外は1である。


4.他にカウンタ、シフトレジスタなどがある。

5.論理式はブール代数で簡略化できるので興味のある人は勉強してください。

2進数、2進化16進、2進化10進数

① 2進数

・数値0と1のみを用いる数体系(2で桁上げが起こる:10進では10で桁上げ)

・コンピュータでは全て2進数を用いて計算している。この1桁をビットと言う。

例)010111101

・2進数の桁と10進数の桁
Nの値N⁴N³N²N¹N⁰
2進数2168421
10進数1010,0001,000100101
  1101 は10進数では 13になる。 1×2³ + 1×2² + 0×2¹1×2⁰   =13

     8  + 4   + 0   + 1 =13



②2進化16進

・2進数は桁数が非常に大きくなるため人間が扱う場合は具合が悪い。

そこで、2進数を4ビットごとに分け、4ビットの中での10進値を表す。

・4ビットで10進数の「0~15」を表すが10からはABCDEFで表す。

・同じ方法で0~9だけを扱うBCDコード(Binary Coded Decimal:「2進化10進」コード)がある。

このBCDコードはディップスイッチなどの設定に使用される。



2進数10進数2進化16進2進化10進
0000000
0001111
0010222
0011333
0100444
0101555
0110666
0111777
1000888
1001999
101010A-
101111B-
110012C-
110113D-
111014E-
111115F-


◎ 1101 0011 1010 0101 は 左から4ビットずつ分割して D3A5 と読む。

   13→D:3→3 :10→A:5→5

〒992-0324 


山形県東置賜郡高畠町入生田46-1

高畠駅

タクシー 5

営業時間 8:30-17:30(土・日・祝日除く)