変圧器の原理と分類
1)変圧器の原理
・鉄心に巻きつけたコイルA に交流電流が流れると交番(交互に変化する)磁界が発生する。
この磁力線は鉄心を通りコイルB に電圧を発生させる。
変圧器の一次と二次の電圧比と巻数比は比例する。
例) A = 100回 B = 50回 巻であれば
A = 100 Vのとき B = 50 V になる。
※巻数と電圧は比例する。
※直流では磁束が変化しないため変圧器は使えない。
(直流では磁束が変化する時、すなわちスイッチを入れた瞬間と切った瞬間だけ電圧が表れる)
2)変圧器の分類
①相数
・単相、三相
②用途別
・電力用、操作用、計測用
③絶縁材の種類 (下表参照)
(モーターなどの他の電気機器でも同様)
絶縁材の種類(種) | Y | A | E | B | F | H | C |
許容最高温度(℃) | 90 | 105 | 120 | 130 | 155 | 180 | 180超 |
※実際に、この温度で使用するわけでは無い(各機器の規格で決められている)
④一次二次巻線間接続の有無
複巻きでは、一時巻線と2次巻き線が分離されているが、単巻きでは、巻線を共用するため大地間電圧が一次二次とも同じになるので注意が必要である(200V/100Vでも、2次側の大地間電圧は最大で200Vになる)
※スライドトランスなどは単巻である。
※他に構造、絶縁物、冷却方式、用途等による多くの分類があるが省略する。
3)変圧器の端子記号
一次側が大文字、二次側が小文字で表記される。
※上図の1φ3W(単相3線)ではu2とV1を接続してN相とする。
単相3線式変圧器では、専用の3端子のものもある。
※U,uを(+)、V,vを(-)、Nを(0)と表示することもある。また、u側を電圧数字で表示する例もある。
※日本国内ではUが「プラス」の時uが「プラス」になるタイプ(減極性)である。
※実際の端子配列も Uと u , V と v が向かい合わせになる例が多い。
三相変圧器と単相変圧器の構造の違い
三相変圧器は、単相変圧器を2個(V結線の場合) または3個 組み合わせた構造になる。
電気的な部分は、ほぼ同じであるが磁気回路(鉄心部分:コア)が共通化されるため、
単相変圧器3台より、三相変圧器の方が、小型で軽量になる
変圧器の定格容量
単相 P = V I (VA)
三相 P =√3 V I (VA)
V:定格電圧 I:定格電流
※変圧器の容量は皮相電力で表す。
※電圧タップ付きのものは、全容量で使用できるタップと容量に制限のある低減タップがある。
◎ 三相では単相の√3倍になる点が異なる。
◎ 単相変圧器を用いて三相接続した場合の三相の容量は、単相変圧器の合計容量で呼ぶことがあるが、使用可能な容量ではない。
(単相容量×√3 では無い点に注意。実際の容量は26.の二次電圧×二次電流×√3倍になる)
ただし、V結線の場合は単相、三相それぞれの容量を別々に表示する。
※変圧器は50Hz、60Hz専用と50Hz、60Hz共用があるので注意すること!
※kVAとkWは異なる単位なので誤解しないようにすること。(kVAは皮相電力、kWは有効電力)
例) 7.5kVAのトランスと7.5kWの装置は同じ容量ではない。
変圧器の並列接続(並行運転)
◎基本的に、メーカー、形式、容量、電圧、周波数、製造時期が同一であれば、並行運転が可能である。
◎この条件以外で並列接続を行うには、一次/二次電圧、インピーダンス電圧、内部抵抗とリアクタンス
(インダクタンス+キャパシタンス)比、極性などが適正か、確認する必要があり、充分な知識が必要である。
変圧器の直列接続
・直列接続は、可能であるが、実験などの特別な場合のみと考えてよい。
・出力電流は定格の小さい方の値となる。
・電圧変動は大きくなる。
単相変圧器の三相接続
①3台の単相変圧器を用いた標準的な接続の組み合わせ
同一変圧比の単相変圧器を3台接続し一次側線間に電圧Vを加えたとき、二次電圧、電流は下表の様になる。
一次 | 二次 | 二次線間電圧 | 二次線電流 | 参考 |
Y | Y | V | I | 高調波が多い:小型Tr |
Y | △ | 1/√3 V | √3 I | 変電所に多い:中性点接地 |
△ | Y | √3 V | I | 発電所に多い:中性点接地 |
△ | △ | V | √3 I | 配電線に多い |
凡例 Y:星型(スター:) △:三角(デルタ)結線 V:1台の変圧器の電圧 I:1台の変圧器の電流
※上表は単相変圧器を組合わせた場合で、3相変圧器として作られたものは、正常電圧になるように巻数が調整されている。
※接続を誤ると思わぬ二次電圧が出て危険である(高ければ機器の焼損、低ければ過負荷など)
◎ 各巻線の電圧を「相電圧」、接続時の電線間の電圧を「線間電圧」と言う。
◎ 各巻線に流れる電流を「相電流」、接続時の電線に流れる電流を「線電流」と言う
星型:スター結線 三角:デルタ結線
(逆さまではYに見える)
相 :左図のu、vで表わされる巻線
線間電圧:左図のRとS、SとT、TとRの間の電圧
◎なぜこの様になるのか、それぞれの単相トランスで考えてみると解りやすい。
・スター(Y)結線のとき
1)一次側の場合は
2台直列で電圧を受ける → 相電圧は、線間電圧の1/√3になる(2台のトランスで電圧を分担する)
2)二次側の場合は
2台直列で電圧を出す → 相電圧の√3倍の線間電圧が出る(2台のトランスの電圧が加算される)
3)電流は一次、二次に関わらず、相電流と線電流は等しい。
・デルタ(△)結線の場合は一次の場合も二次の場合も
1)並列に接続されるため、相電圧と、線間電圧は同じである。
2)並列接続のため、線電流は、相電流の√3倍になる。
②V結線
・デルタ結線の1個の変圧器を除いたもので、小容量に用いられる。
・三相変圧器の1台が故障した時の応急的対応や、小容量設備で動力用の3相3線と電灯用の単相3線とを兼用するときに用いられる。
この場合、電灯を兼ねる変圧器のほうが大容量になる。
※線電流と相電流が同一となるため、デルタ結線に比べ線電流が1/√3になる。
※しかし、絶縁材の進歩で変圧器の故障が減少したため、現在ではあまり用いられていない様である。
現在では、デルタ結線で一相だけを電灯兼用に大容量とした変圧器も市販されている。
③その他の結線
大容量の単相を2回路、取り出すための「スコット結線」やV結線の一種の「逆V結線」などがあるが一般的ではないため、省略する。
○ スター結線、デルタ結線時の相電圧と線電圧の関係
①直角三角形の各辺の長さの比には次の関係がある。
C²=A²+B² ・・・・・・直角三角形の定理
ここで、辺 B・Cの内角が30°の時
A=1、C=2、B=√3 である。
◎ 1:2:√3 と 覚える。
②相電圧と線間電圧の関係は左図の様になる。
※破線がスター、正三角形がデルタ
eとVは直角三角形が2個組み合わされた関係になる。
V=2 (√3×e/2) = √3 e
※1. Y → △ では Vがeの√3倍
2. △ → Y では eがVの1/√3
変圧器の電圧変動率
変圧器は、無負荷時(負荷が接続されていない)と全負荷(定格2次電流が流れている)時では、2次電圧が変化する。
(変圧器内部で電圧降下が生じるため)
※無負荷時の二次電圧は、全負荷時の二次電圧より高くなる(全負荷のとき定格電圧になる)
電圧変動率=(無負荷時の電圧-全負荷時の電圧)/全負荷時の電圧 ×100 (%)
※電圧変動率は電力用変圧器では1.3~2.5%程度で、容量が小さいほど大きくなる傾向がある。
計器用変成器
計器用変圧器(VT:旧PT)と計器用変流器(CT)の総称である。
それぞれ、一次電圧によって、低圧、高圧、特別高圧用に分かれている。
①計器用変圧器(ボルテージトランスフォーマ)
・電圧測定用の小型変圧器で、変圧比(一次電圧と二次電圧の比)が正確で、電圧変動が非常に小さくなる様に作られている。
・二次電圧は110V 定格負担は 15VAから500VA程度まで。
・確度階級(誤差のパーセント)は 1.0級、3.0級 など。
<< VT:三相回路の接続(単相VTを2台接続)>>
※一次ヒューズが付いていないVTもある。
※三相を計測する場合は左図の様にVTを2個使って、V結線で接続する。
※二次は(r)と(t)相だけに、ヒューズを入れる事もある。
※一次側が高圧の場合は、二次側のS相を接地する。
(二次側ヒューズよりもVT側で接地すること)
※二次側配線は2sqを用いるのが普通である。
※左図のヒューズは古い電気シンボルで表記している。
②計器用変流器(CT:カーレントトランスフォーマ)
・電流計測用の特殊変圧器で、変流比(一次電流と二次電流の比)が正確に作られる。
(変圧器と同じ原理であるが、電圧/電圧ではなく電流/電流にしたもの)
・電流を流す(流される)為にインピーダンスは非常に低い。
・電流は巻数比に逆比例する。
※大電流の巻線は巻数が少なく(最低1回貫通)、小電流側は巻数が多い。
・端子記号はK, k、 L, l(エル)
・計器用変流器(CT)の二次側を開放してはならない(短絡はOK)
※CTでは一次電流が負荷電流あるため、二次側を開放すると二次側に高い電圧が発生し
CTや他の機器、電線などの絶縁を破壊し非常に危険である。
◎CT二次側配線は2Sq以上を用いる(電圧降下を減らす+電線の機械的強度確保)
制御盤で二次電流が1Aの場合は1.25sqでもよい。公共建築工事標準仕様書(電気設備編:平成16年版)(官庁)
<<電源側>> ・三相回路の接続:単相CT2台使用
※CTの二次側回路には、ヒューズを使用しないこと!
※電流計切り替えスイッチは、二次側を瞬時でも開放しない構造の専用品を用いること。
※左図の例では3相回路にCTを2個使用し、S相の電流値はR相とT相の合成電流を見る方式である。
・計器用変流器の負荷(計器など)は直列に接続する。(並列では分流し小さい値を示すため)
・CTの負担:負担はVAで表す。負担を超えない様にしなければならない。
二次負担 = 二次電流×二次インピーダンス (VA)
※二次負担には電線のインピーダンスも含まれるため電線長が長い場合は注意が必要である。
・定格負担5VA~100VA、確度階級0.5~3.0級、二次電流5A、1Aのものがある。
・CTは使用する主回路電圧によって低圧用から特別高圧用がある。
※三相の場合、PT、CT共になるべく負荷が各相でバランスする様に接続する。
・CT二次側電線の負担計算(概略計算)
1)電圧降下1(V)の時の電線こう長(片道の長さ):力率=1(力率で変化)
※内線規定:資料1-3-2より:単線を撚り線として転記
2)計算方法 (概算法:見当をつける程度)
例)CT二次電流5A、単相2線式、電線こう長10m、電線サイズ 2 mm2のとき。
上表から5 A、 2 mm2 時の、こう長は11mである。
電圧降下=10m/11m=0.9(V)
二次負担=5 A ×0.9 V=4.5 (VA)
※電線だけで4.5VAの負担が発生することを意味する。
◎ CTの定格負担と電線サイズ、計器などの全部の負担を考えて適正な組み合わせを決定する。
参考:貫通型CTの一次巻線の巻回数
カタログにAT(アンペアターン)が記載されている。このATに対する貫通回数は次の様に計算する。
※ AT = アンペア×ターン(巻き回数)
例)60AT 定格電流10A(電流計の定格)のとき
貫通回数= 60/10 = 6 (回)
※貫通窓(穴)に通った電線の本数を貫通回数とする。この場合は6本の電線が穴の中に通るように巻く。
※貫通穴サイズと電線被覆外形、貫通回数を比較し、貫通が可能なCTを選択すること。
③零相変流器(ZCT)
零相変流器は、地絡や漏電を検出し警報や遮断を行うために地絡継電器などと組合わせて用いる。
原理はCTと同じであるが、一次巻線に「一つの回路の全ての電線」を使用する点が異なる。
電磁的平衡で学んだ通り、合成された電流は「ゼロ」になるはずで、発生する磁界もゼロになり、二次巻線には電流が流れない。
しかし、ZCTの負荷側で地絡が発生した場合、別のルートで電流が流れるため、合成された電流はゼロにならず、二次側に電流が発生する。
この電流を地絡継電器などによって検出し、漏電(地絡)保護などを行う。
※ ZCTの二次回路はCTと同様に開放しない事。
ただし下図のkt、lt は k、l が継電器に接続されていれば開放状態でよい。
(kt、lt は、この巻線に電流を流して継電器の動作試験を行うための端子)
【回路図】
【外観の例】
※ケーブルのシールド又は接地線を零相変流器に貫通させるかどうかは、保護範囲を考えて決定する。
(保護範囲とケーブル内での地絡を検出するかどうかで決定される)
※シールドを貫通させた場合はケーブルの中で地絡した場合に検出できなくなる。
検出する場合はシールドに電線を 接続し、電線を逆に貫通させシールドが貫通しない状態を作る
※VTは操作トランスとして使用できる?
・通常、VT容量の2倍程度の容量のトランスとして使用できる。
「制限負荷」として、明確にしているメーカー(三菱など)もある。
(ただし、誤差が大きくなるためVTとしては使えない)
※CTの事故
・二次回路ネジの締め忘れ、二次回路の並列接続、三相時の誤接続などの誤りで火災が発生し、
人身事故などの大きな損害が出ている例もある。
・貫通回数の誤りによって継電器や計器が正しく働かない事もある。
※CTの二次側こう長が長い場合は、CT二次電流1Aを使用する(電線分の負担が減少する)
※CTの一次定格電流は、使用電流の1.5倍ぐらいで選定する。
また二次負担定格は実負担の2倍ぐらいが良いと言われている。
※CTには、短絡時の大電流に対する定格として 短絡電流÷定格電流の比を表す過電流強度(倍)、
定格耐電流(kA)、過電流定数などの定格がある(特に高圧や大電流で注意が必要)
※CTは通常K(一次)、L(二次)で使用する。配置上やむをえない時は逆にしても良いが二次側も
逆にすること(よほどのことが無ければ逆接続は行わないようにする。)
※ZCTに、負荷側ケーブルシールドを貫通させた(させない)為に地絡で動作しなかった例がある。
交流モーターの特性
換気ファンを除けば盤内にモーターが付く事はほとんど無く、盤外の機械に付く為、詳しい説明はせず、
必要と思われる事項について説明する。
モーターそのものに付いては多くの参考書があるのでそれらで勉強して欲しい。
①出力について
・普通 〇〇kWと言っているのは「出力kW」である。入力ではない。
・入力kW= 出力kW/(力率×効率) ※力率、効率は小数で表す。
・一般的なものについては「内線規定」などに入力の規約電流値が記載されている。
②相数、電圧による入力電流の違い
・出力kWが同一の場合の電流値
:電流は電圧に反比例する。200Vで1Aのモーターと同一出力の100Vモーターは電流が2Aになる。
(電圧が低いモーターほど電流が大きくなる)
:三相よりも単相の方が電流は大きくなる(三相=1:単相=√3)
:負荷が重いほど電流は大きくなる。
※小型のもの、単相のものほど力率、効率が悪く kW当りの電流が大きい。
③モーターの種類
・普通の設備に最も多く使用されるモーター
:3相 三相誘導電動機(かご形モーター)
:単相 コンデンサモーター
※電気ドリルなどはユニバーサルモーター(ブラシが付いている)
※他にも多くの種類があるが省略する。
④モーターの性質
・直入れ起動時には全負荷電流の数倍(約6~8倍程度)の電流が流れる。
※直接電圧を加えて始動する方法を、全電圧始動(じか入れ:直入れ)と言う。
・電圧が低下すると電流が増加する定電力特性を持っている。
・3相モーターが運転中に単相になった場合は負荷が軽ければそのまま回転しつづける。
この状態ではモーターが過負荷状態になり焼損するおそれがある。
・3相モーターに単相電源を加えただけでは回転しないが、外部から回してやると回転し始める(実際にやってみると難しい)
単相モーターのほとんどのものが運転時にはこの性質を利用している。
・単相のコンデンサモーターでは、コンデンサを通る電流が進む性質を利用して回転方向を決定する(下図)
※コンデンサを通過する電流が進むため、2相の回転磁界ができる。
※コモンと正転で正転方向に、コモンと逆転で逆方向に回転する。
〒992-0324
山形県東置賜郡高畠町入生田46-1
営業時間 8:30-17:30(土・日・祝日除く)