電気のおさらい(2)
11.抵抗器(レジスタ)
オームの法則からわかるように電流を制限する働きを抵抗(レジスタンス)と言う。
①抵抗器は、正確な抵抗を持たせるように作られた部品である。
・直流でも、交流でも抵抗値は、ほぼ同一(商用周波数程度の場合)で、極性が無い。
②抵抗器の種類
・炭素系抵抗器 : 炭素皮膜抵抗器
・金属系抵抗器 : 巻線抵抗器(ホウロウ抵抗)/酸化金属皮膜抵抗器/金属皮膜抵抗器など
・可変抵抗器 : 炭素系/金属系
③抵抗器の容量 : ワットで表す。(抵抗器を流れる電流の二乗×抵抗値)
※抵抗器は、種類によって、製作可能な最小抵抗値と最大抵抗値、ワット数が異なる。
W = I2 R (ワット:W)
例) 1kΩ 1/4W の抵抗に 何アンペア流せるか? 1/4W=0.25W
式 I= = 0.0158A → 15.8mA(15.8ミリアンペア)
※但し、この定格電流を100%流すと数百度の高温になるので、寿命や、周囲への影響を考えて、
プリント基板などでは50%~100%、ホウロウ抵抗などでは25%~50%ぐらいに抑える。
※巻線型の可変抵抗器では10%ぐらいに抑えると寿命が長くなる。
※抵抗器の表面温度および端子の温度が非常に高くなるため、電線などが抵抗器から充分離離れるように注意すること。
また抵抗器を複数並べて取り付ける場合は少なくとも抵抗器の幅程度の隙間を設けること。
④カラーコード(小型の抵抗器で抵抗値や誤差などを色で表した線)

4本線のもの | ①② 数値 | ③位取り | ④誤差 :誤差2%以上のもの |
5本線のもの | ①②③数値 | ④位取り | ⑤誤差 :誤差1%以下のもの |
色 | 数値 | 位取り | 誤差(記号) | 覚え方(A) | 覚え方(B) | 覚え方(C) |
黒 | 0 | 10⁰ | 黒い礼服 | 黒糖 | クレイ | |
茶 | 1 | 10¹ | ±1%(F) | 茶を1杯:小林一茶 | 茶ワン | 茶ワン |
赤 | 2 | 10² | ±2%(G) | 赤いニンジン:ねあか | 赤丹(赤に):あかね:赤鬼 | 赤に |
橙 | 3 | 10³ | だいだいミカン | だい三者 | 橙三 | |
黄 | 4 | 10⁴ | 四季 | きしめん:棋士:岸恵子 | 黄四(キシ) | |
緑 | 5 | 10⁵ | ±0.5%(D) | 五月緑(さつきみどり) | 嬰児(みどりご) | みどり五 |
青 | 6 | 10⁶ | ±0.25%(C) | 青二才のろくでなし | アオムシ | 青(セイ)六 |
紫 | 7 | 10⁷ | ±0.1%(B) | 紫七部(式部) | 紫七部(式部) | 紫七部 |
灰 | 8 | 10⁸ | ±0.05%(A) | やばい:八戒 | ハイヤー | 灰や(八) |
白 | 9 | 10⁹ | クシロ:白い雲 | ホワイトクリスマス: シロクマ | シロク(白九) | |
金 | 10⁻¹ | ±5%(J) | 金吾 | |||
銀 | 10⁻² | ±10%(K) | 銀十 |
※覚え方は自由。
※カラーコードは、コンデンサにも用いられる。
12.コンデンサ(キャパシタ)
コンデンサは抵抗とは異なった形で電流を制限する働きがある。また直流、交流の違いで働き(使い方)が異なる。
①直流では、静電気を溜めるバッテリーのような働きをする。
※電圧を加えると充電電流が流れ、充電が終わると電流がほとんど流れなくなる。
電源が無くなると自然に放電するが、放電時間はコンデンサによってまちまちである。
②交流では、極性が変化するため、①の状態が連続して発生する事で電流が流れる。
③コイルとは逆に、周波数が高いほどリアクタンスは小さくなる。
Xc = 1/( 2 π f C) (Ω) ここに f:周波数(Hz) C :キャパシタンス(F)
※ Xcを容量性リアクタンスと呼ぶ。
例)50Hz、10μF では 1/(2×π×50×10×10-6 ) = 318.3 Ω
※キャパシタンスはコンデンサの容量のことで基準単位はF(ファラッド)であるが
製品ではこの100万分の1のμファラッドまたは1兆分の1のpファラッドで表示している。
④極性のある物と無い物がある。極性のあるものは主に直流で使用する。
※極性を間違えると爆発や赤熱し、火災の危険がある。
⑤電圧に対し電気角で90°進んだ電流が流れる。
⑥コイルとは逆の性質を利用して、コイルによって発生する遅れ無効電力をコンデンサの
進み無効電力で打ち消すような使い方がある(進相コンデンサ)
⑦交流を良く通す性質を利用して、電気的なフィルタとしての使い方もある。
⑧充放電でリレーや電磁石を動作させる使い方がある。
⑨コンデンサの種類
・極性有り : アルミ電解(ケミコン)、タンタル電解、積層セラミック
・極性なし : セラミック(積層型を除く)、プラスチックフィルム、マイカ、紙(ペーパー)
・電気二重層コンデンサ(超大容量)
⑩コンデンサは種類によって、機械的強度、リップル、充放電、過電圧、逆電圧などの許容範囲が、異なる。
※コンデンサは電圧に対する余裕が少ない(特に逆電圧に弱い)ため注意が必要である。
コンデンサは電圧に対して非常にデリケートである。
⑪pF(ピコファラッド)単位の小型コンデンサでは容量を次のように表示する物もある。
103K → 10×10³ピコファラッド 誤差10%
この文字の頭に数字文字がある場合は耐圧を表わしている。
コンデンサの形の例
コンデンサの働き

直流の充放電
①スイッチA(ON)→充電→スイッチA(OFF)
②スイッチC(ON)→負荷Rへ放電
交流
①スイッチA、Bが交互にON、OFFする。Cは開放状態
②スイッチAによって充電される。
③スイッチBによって逆の極性に充電される
④この充放電の繰り返しで→連続して電流が流れる。
コイル(インダクタ)
コイルもコンデンサや抵抗とは違った形で電流を制限する働きがある。
①電流の変化を邪魔する働きがある。
・電流の増加や、減少を妨げる様に働く。
◎交流では、電圧より電気角で90°遅れた電流が流れる。
②直流では電流の流れ始めと、電流が切れるときだけ影響がある。
③交流では周波数が高くなるほどリアクタンスが高くなる性質がある。
XL = 2πf L (Ω) ここに f :周波数(Hz) L:インダクタンス(H)
※ XLを誘導性リアクタンスと呼ぶ。
※ インダクタンスはコイルの特性を表わす名称で基準単位はH(ヘンリー)であるが
製品ではこの1000分の1のミリヘンリーが多く使われる。
例)50Hz、10mH では 2×π×50×10×10-3 = 3.14 Ω
④小型のものは、通信関係、電源などで、プリント基板などに付いている。
⑤盤では、主盤内のDCリアクトル、ACリアクトルなどがある。
また蛍光灯安定器もこの仲間である。
⑥コンタクタ、リレー、トランス、モーターの中のコイルも同じものである。
※巻数が多いほどリアクタンスが大きくなる。
※鉄心があると磁力が強くなり、リアクタンスが大きくなる。
交流のリレー、コンタクタなどは、可動鉄心が開いている時は電流が多く流れ、
吸着後は電流が減少する(交流電磁石、電磁弁なども同様)
一般の電気回路では、ほとんど [抵抗] [コンデンサ] [コイル] の三つが組み合わされる。
抵抗(R)、誘導性リアクタンス(XL)、容量性リアクタンス(XC)を合成したものをインピーダンスと言う。
L,C,R直列の場合インピーダンス(Z)は次の式で表される。
これらを直列または並列に組み合せた回路の計算については省略する。
◆コイルとは薄い絶縁被覆の付いた導体を円筒状に巻いた物で下図のような形状の物もある。
発電機、トランス、モーター、リレーや電磁接触器など様々な製品に使用されている。

◆抵抗、キャパシタンス、インダクタンスは抵抗器やコンデンサ、コイルだけにある?
・抵抗、キャパシタンス、インダクタンスは電気回路では何処にでも存在する。
理想的な、抵抗、コンデンサ、コイルについて説明してきたが、厳密にいえば、
これらの部品には、レジスタンス、キャパシタンス、インダクタンスの三つが、組み合わされている。
・電線間や大地間には静電容量があるため、漏れ電流によって、LEDの点灯、リレー、Mcttの開放不能などの現象がおきることがある。
a)周波数によって異なるが、ケーブル長、数百メートル程度で、この現象が発生すると言われる。
b)直流では、リップルが多いと、この現象が出ることがある。
c)トランスの一次巻線と二次巻線の間にも静電容量があり、電圧を加えた瞬間、二次側と対地間に高い電圧が発生する事がある。
また、一時側から二次側へ、高周波電流が流れている事がある。
◆電線が一本でもコイルの仲間?
一本でも電流が流れる事によって磁界が発生するので、コイルと同じである。
そのため、電圧降下が大きくなる、発生した磁界によって周りの金属が熱くなるなどの思わぬ現象が現れることがある。
◆インピーダンスの大部分が、抵抗と誘導性リアクタンスである(コンデンサ回路は別)
相と線(交流の場合)
・発電機の項で説明したように、起電力(電気の発生源)を相と呼ぶ。(相を記号φで表すことも多い)
(これを受ける方の変圧器や電動機のコイルなども、相に対応していると言う意味で相と呼ぶ)
※電圧の時間的変化が同一の場合は同相と呼ぶ。
・相または相の組み合わせに接続され電気を伝える線を「線」と呼ぶ。(線をWで表すことも多い:例1φ2W)
・下図に変圧器(トランス)の場合の相と線の例を示す。
※下図の矢印はある瞬間の極性を表す。
① 単相(1相)2線
相数は1 → 単相
線数は2 → 2線

② 単相3線(電源を二分割した単相)
相数は1 → 単相
線数は3 → 3線
(一次側は単相2線:二次側は単相3線)

③ 3相3線、3相4線
相数は3 → 3相(各相の位相差は120度)
3相でN相が無いもの → 3線
3相でN相があるもの → 4線

※電気を受け取る方を「一次側:プライマリー」出すほうを「二次側:セカンダリー」と言う。
発電、送電、配電
発電所の発電機で作られた電気は網の目のような送配電網の多数の変電所を経由し、電圧、周波数、位相を調整して需要家(電気を買う人)に供給される。
下にイメージ図を示す(くわしくは電力会社のホームページなどを参照)
※ 自家用変電設備を持つ需要家は特高又は高圧受電が多い。

電圧の区分
電圧の高さによって次の様に区分される。
クラス | 交流 | 直流 | 記事 |
特別高圧 | 7,000V超過 | 7,000V超過 | 送電線など |
高圧 | 600V超過 | 750V超過 | 配電線など |
低圧 | 600V以下 | 750V以下 |
※低圧では法規などで、300V以下と300V超過で扱いが異なる場合が多い。
※また、400V級、200V級、100V級、60V以下に分けて規定される事が多い。
電圧降下
実際の回路では電流が流れている状態で負荷の電圧を測ると、電源の電圧とは異なっている。
これは、電流が流れたために各部分のインピーダンスに電圧降下が生じるためである。
下記のような回路に 電流(I)が流れると電源を含め、それぞれインピーダンス×電流 の電圧降下が生じる。
それぞれの部分の電圧降下の合計に負荷電圧を加えた電圧が電源電圧に等しくなる。(ベクトル的な合計が等しくなると言う意味)

E =I(Z0+Z1+Z2+ZL)
= V0+VW1+VW2+VL
※上式はベクトルでの合計
※ 電流が流れると電圧降下が生じる。
※ 電線路が長い場合は十分な検討が必要
(電圧降下が大きいと制御回路や負荷機器に悪影響がでる)
・実際の電圧降下
配電線の電圧降下は、一般に次の式で表される。
単相回路 Ve = I ( R・Cosθ+X・Sinθ)
三相回路 Ve=√3 ・I ( R・Cosθ+X・Sinθ)
ここでCosθは力率である。
※Rは交流実効抵抗で、温度上昇時の導体抵抗+近接効果+表皮効果などになるが100Sq以下では導体抵抗以外は
あまり問題にならない。
また金属管内などの場合、周囲の磁性体の影響を受けるが、計算が困難であるため、電気工学ポケットブックや
内線規定などの表を見て検討する。
※力率が悪い場合 22Sq(スケア= mm2)を境に、細い電線では電圧降下が小さく、太いものでは電圧降下が大きくなる。