電路・負荷保護(1)
電線路の保護(電線路:電線、ケーブルなど)
電気を供給する電路は電気的な事故から保護する必要がある。保護が不充分であれば電線が焼損し火災や人身事故が発生する。
①短絡に対する保護
・短絡とは異なった極性の導体が接触した状態を言う。
※高圧で十数kA、低圧で変圧器二次電流の30倍ぐらいの電流が流れ火災や機器の破損が発生する。
※アーク(電弧)を伴った場合は電流が小さくても火災の危険が高い(アーク短絡)
・保護には遮断器、ヒューズを用いる(短絡電流を遮断できるもの)
・高圧回路では、限流ヒューズや過電流継電器と遮断器を組み合わせて用いる。
(アーク:電気の火花)
②地絡
・地絡とは電位のある導体が大地に対し接触した状態を言う。
例)電線が傷つき、筐体と接触した。 例) 絶縁物が劣化し、やがて絶縁が破壊され火災が発生した。
※制御回路が誤動作する場合もある。
※電源の接地方式や金属構造物の接地状態で異なるが、最大では短絡並みの電流が流れる。
※アークを伴う場合は電流が小さくても火災の危険が高い(アーク地絡:400V以上の回路に多い)
(住宅の200V回路と300Vを超える回路ではELBの設置が必要:内線規定1375-1)
・低圧電路の保護には漏電ブレーカーが用いられる。
・非常用や消防用で遮断すると大きな危険を招くような電源では漏電警報器を用いる場合もある。
・高圧では地絡継電器と遮断器を組み合わせて用いる。
③過負荷
・モーターなどに負荷が掛かりすぎ、通常の数倍の電流が流れる状態を言う。
④過電流
・定格を超える電流
※上記①~③を言う場合と③だけを言う場合がある。
モーター保護(交流誘導電動機)
モーターは負荷の状態やモーターそのものの故障で加熱し場合によっては焼損するため保護が必要である。
①過負荷保護
・モーターの特性に合わせた保護装置を用いる。
※モーターブレーカー、サーマルリレー+電磁接触器、静止形保護継電器など。
◎機械自体を保護するために瞬時過負荷を検出するショックリレーもある。
②欠相保護(単相運転保護)
・欠相とは3相で給電すべき回路が、単相で給電する状態になることを言う。
→通常の数倍の電流が継続して流れ、電路、モーターともに焼損する。
・欠相検出機器 → 欠相保護付きサーマルリレー、欠相保護機能を持つ保護継電器
・上記と電磁接触器または遮断器を組み合わせて用いる。
③逆相保護
・モーターが逆回転するような相の接続状態を言う。→ 機械の破損、モーターの焼損
・逆相が検出可能な継電器と電磁接触器を組み合わせて保護する。
漏電保護 (詳細は内線規定1375-1を参照:詳しい規定がある)
絶縁物の劣化や導体に樹木、動物などが接触し大地に対して電流が流れる事がある。
これを漏電と言い火災や感電事故が発生するため保護が必要である。
※地絡も漏電も意味は同じであるが高圧以上では地絡、低圧では漏電と言う場合が多い。
①漏電による火災を防止する。
1)漏電警報器
・回路を遮断すると危険な場合は漏電火災警報器を取り付ける。
(非常用照明、非常用エレベーター、消防用設備、鉄道用信号機など)
・通常の漏電検出方式のものと、絶縁状態を監視する方法(少ない)がある。
2)漏電ブレーカー(ELB)
・50mA以上のELBを用いる場合は、ほとんどが漏電火災を防止する目的である。
◎400V回路ではほとんどの場合ELBを設置しなければならない(400Vはアーク地絡の可能性が高く火災の危険が大きい)
②感電防止
・漏電ブレーカーを用いる。
・家庭用を除き、分岐回路に施設する場合が多い。高速、高感度型を用いる。
高速型 :0.1秒以下で動作するもの。
高感度型 :30mA以下(5,10,15,30mA)で動作するもの。
・二次配線の長さが長い場合は洩れ電流が多くなり、誤動作する可能性が高くなる。
制御回路の保護
制御回路は過電流遮断器(ヒューズ、MCCB、CPなど)で保護する。 ※CP:サーキットプロテクタ
ただし、次の場合はこの過電流遮断器を省略できる特例がある。
①分岐MCCB(モーター保護など)で制御回路の電線が保護できる時(下記の条件が一般的)
・1.25SqでMCCBが15A以下の場合 (公共建築工事標準仕様書:一般的でもある)
・2SqでMCCBが30A以下の場合 (内線規定3302-5②a)
②制御回路が短く、短絡などが発生しにくいと認められる時
・制御回路の「こう長」が3m以内のとき (内線規定3302-5②d)
開閉と遮断
※遮断とは短絡や地絡などの異常電流を切るもので、開閉とは異なる。
※盤の分岐MCCBなどでは主幹MCCBと同時に遮断する(カスケード遮断)ように組み合わせを選定すれば少容量でもよい。
また、カスケードでMCCBの1回だけの遮断能力はカタログ値より大きいため、回路ごと交換可能なコントロールセンタなどでは、さらに小さい遮断容量のMCCBを選択できる場合もある。(Ⅰ種カスケード遮断容量:メーカーに確認を要す)
・開閉とは定格(または過負荷程度)以下の電流を開閉(入切)することを言う。
・開閉容量を決定する場合は、次の点に留意する必要がある。
電源 AC/DC (DCのほうが困難)
回路電圧 電圧が高いほど困難
負荷の力率 力率が低い(悪い)ほど困難
負荷の性質 突入電流がある場合は投入容量が問題になる
開閉の頻繁度 頻繁に開閉するほど接点が消耗する(寿命)
制御方法 正転、逆転を繰り返すような場合は大きな開閉容量が必要
※それぞれの機器の定格値や寿命曲線を見て決定する。
※これらは、スイッチ、リレーなど、接点全般に適用される。
接地
接地とは導体または機械器具を大地に対して電気的に接続することを言う。
・接地は大きく分けて次の様な目的で行われる。
①絶縁破壊や誘導による異常電圧の防止
②雷からの保護
③保護装置の動作を確実にするための接地
④ノイズによる機器の誤動作防止
⑤大地を電気回路の一部として使用する場合
⑥静電気による危害を防止するため
⑦その他(電波の送受信に関するもの等)
・盤の接地はほとんどが①~④である。
・接地の種類を下記に示す(電気設備技術基準の解釈、内線規定、JIS等を参照)。ただし、一次電圧が特別高圧の場合を除く。
種類 | 旧規格名称 | 目的 | 接地線の最小太さ (銅線の場合) | 適用区分 | 備考 |
A種 | 第1種 | 感電防止 | 2.6φ(5.5sq)以上 | 高圧の筐体鉄台等 | |
B種 | 第2種 | 混触時の二次 電圧上昇防止 | 2.6φ(5.5sq)以上 (変圧器容量で異なる) | 高圧から低圧に変換する変圧器の低圧側中性点又は 混触防止板 ※1 | 200V級は中性点以外の線でもよい(二次電圧が 300V以下) |
C種 | 特別第3種 | 感電防止 | 1.6φ(2Sq)以上 (過電流保護器の容量で異なる) | 低圧300V超過回路の 機器筐体 | 例)400V回路の筐体 |
D種 | 第3種 | 感電防止 | 1.6φ(2Sq)以上 (過電流保護器の容量で異なる) | ①高圧回路の変成器二次 ②低圧300V以下の筐体等 | ①VT、CT、ZCT など ②例)200V回路 |
A種 避雷器用 | 第1種 | 雷害防止 | 14Sq以上 | 高圧避雷器二次 (特別な規定がある) | 盤内では端子台までは他の接地や筐体と分離 |
耐電圧、雷インパルス耐電圧、絶縁抵抗
①耐電圧(耐電圧試験)
製品の過電圧に対する強さを試験する電圧を言う。時間は数サイクルから数分まで。
また、器具、材料によって試験方法が異なる。
◆空気中(普通の耐電圧:一般試験)
導体相互間、又は導体と大地間に試験電圧を加える。
※JISC8480キャビネット形分電盤の商用周波耐電圧試験 単位(V)

注)Uは制御回路の電圧
*印はJISC4620キュービクル式高圧受電設備の値
※制御回路は主回路と分離しているもの。電子回路などの機器は取り外して試験してよい。
※参考:試験方法
◆水中(主にピンホールの有無を調べる:電線類)
導体と周囲の水の間に電圧を加える。
◆スパーク(高い電圧の電線が触れた状態に耐えるか:電線など)
空中に吊るした金属の数珠球を絶縁被覆に触れさせ導体の間に電圧を加える。
◆沿面耐電圧
絶縁物の表面に電極を接触させ、電極間に電圧を加え発煙、燃焼、またはフラッシュオーバー
(絶縁破壊によって電流が流れる事)が発生しないかを試験する。
②雷インパルス
・主に、雷のような瞬間的で高い電圧に耐えうるか否かを試験する。
右の図はインパルスの波形である。

③絶縁抵抗
・絶縁抵抗計(通称メガー)を用いて導体間または導体と大地間の抵抗を測定する。測定電圧は器具定格電圧で変化する。
・温度を上げた状態で測定する場合もある(電線など)
◎ 下表に絶縁抵抗の例を示す。 盤の場合はJISの規定以上であることが必要。

◎耐電圧や絶縁抵抗は機器の種類や場所、適用される規格、仕様によって異なるので注意が必要。
※絶縁体に電流が流れないわけではない。電圧を上げていくと絶縁が破壊されて、電流が流れる。
一旦破壊された絶縁体の絶縁性は元に戻らない。一定時間の間、何ボルトの電圧まで耐えられるかを絶縁耐力と言う。
→絶縁が破壊されると火災が発生する場合がある。
※絶縁破壊は絶縁性の最も弱い部分が破壊される。
→傷、薄い部分、ピンホール、汚れ、鋭角な金属部分、水分などが原因
※電圧の上昇速度が速い(いきなり電圧をかける)と、多少低い電圧でも絶縁破壊が発生することがある。
※電圧を加える電極が尖ったものほど絶縁破壊しやすい(電位傾度)
※耐えられる電圧はそれぞれの絶縁物によって異なる。
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