電気と磁気、電界と力
【電気とは「電荷」によって現れる現象である】
電荷とは物質が電子を余分に持った状態、または電子を失った状態である。
物質 → 分子 → 原子 → 電子 + 原子核
・電子が余分 → マイナスの電荷 :マイナスに帯電
・電子が不足 → プラスの電荷 :プラスに帯電
電流とは電荷の流れである(電荷がバケツリレーの様に受け渡され全体として電荷が流れるように見える)
・金属の中では金属中の電子の移動
・半導体では電子または正孔(ホール:電子が不足した状態)の移動
・液体または気体ではイオンの移動 (イオン: 電子の過不足を起こしプラスまたはマイナスに帯電した原子、又は分子)
【電圧とは電位の差である】
※高電圧でも同じ電位であれば電流は流れず感電しない(電線にとまった鳥状態)
①電位差のあるものを、導体などで閉回路になるように接続すれば電流が流れる。
※ 2個の電池を(+)と(+)、(-)と(-)を接続しても電位差があれば電流が流れる。(一方が充電され危険である)
②インピーダンスに電流が流れると電位差が現れる。
※抵抗を直列に接続して電圧を加えた時、各抵抗の端子電圧の和 = 電源電圧 になる。
【交流と直流】
・直流 : 電源の「プラス」と「マイナス」が変化しない電気 → 電池など
・交流 : 電源の「プラス」と「マイナス」が交互に変化する電気(電力会社から供給を受けている電気など)
※「プラス」「マイナス」を極性と呼ぶ(正しくは電気の極性)
【磁界】
磁気の流れ(磁力線)がある場所(永久磁石などが発生している)
【電界】
電荷が力を及ぼしている場所
【周波数】
交流の極性が1秒間に変化する回数である。
日本国内では例外地域を除き、富士川を境として、東が50Hz(ヘルツ)、西が60Hzである。
【電流と磁界と力】
①「電流」が流れると「磁界」が発生する → 電磁石(交流、直流)
※ 磁力線の向きは電流の方向で決まる。
②「磁界」中の導体に「電流」が流れると電流と磁界の間に「力」が発生する。
例) 電流計、モーター
③ 磁界中を導体が「磁力線を横切る方向に運動」すると導体に電流が流れる。
例) 発電機 (フレミングの右手の法則)
④ 導体に交差する磁界の大きさが変化すると導体に電流が流れる。
例) 変圧器 (フレミングの左手の法則)
【電流と電流の間に働く力】
2本の導体を電流が流れると相互に力が働く。このとき
同方向の電流は吸引し、異方向の電流は反発する。(二つ折りしたホースに水を通すとリング状になるイメージ)
皮相電力、有効電力、無効電力、力率
・抵抗、コイル、コンデンサに流れる電流は、電圧に対してそれぞれ同相、90度遅れ、90度進みとなる関係がある(下図左 参照)
※進み電流と遅れ電流は180度位相が異なるため、合成された無効電流は、差の電流になる。
・電力も、抵抗分の電力を「有効電力」、90度遅れと90度進みの電力を「無効電力」と言う。
また、これらの合成電力を「皮相電力」と呼ぶ(下図右 参照)
※電流と同様に無効電力には電圧に対して90度遅れた誘導性の無効電力と90度進んだ容量性の無効電力がある。
・皮相電力と有効電力の比を力率と呼び、Cosθ(θは有効電力と皮相電力の間の角度)で表す。
※力率は % 又は 小数 で表す。 例) 力率85% とか 0.9 (例:COS 30度=0.866)
◎ 力率=有効電力/皮相電力=抵抗/インピーダンス=有効電流/皮相電流
※有効電流、無効電流は、単に位相の異なる電流であり、役に立つとか立たないとかの意味ではない。
電磁的平衡
導体に流れる電流によって磁界が発生する。
数本の導体に電流が流れるとそれぞれの電流の方向によって磁界が強くなったり弱められたりする。
◎ 下図(左)の場合(位相差が180度の電流)
電流の方向が違うため磁界は互いに打ち消し合う。電流の大きさが同一の場合に磁界はゼロになる。
◎ 下図(中)の場合(同一位相の電流)
電流の方向が同一であるため磁界は強め合う。
◎ 下図(右)の場合(位相差が120度の電流:3相交流)
各相の電流によって発生する磁界は合成されてゼロになる。(実際には磁気抵抗や漏れ磁束の関係でゼロにはならない
電磁誘導とうず電流、ヒステリシス損
①渦(うず)電流 (下図左)
・電流の周りには磁束が発生し、電流が変化すると磁束も変化する(交番電流:交番磁界)
・この磁束の強さが変化すると、磁界中の導体に電流が流れる(変圧器の原理)
・交番磁界中のすべての金属に電流が流れ、導体に熱が発生し、温度が上昇する。
②磁気ヒステリシス損(下図右)
・強磁性体は、磁化したとき磁化された状態を保つ現象がある(永久磁石、鉄など)
これを逆方向に磁化する場合は、残った磁気を打ち消すため最初より大きなエネルギーが必要になる。
◎ ①②ともに損失が発生し、発熱する。(これを応用したものが誘導加熱である・・・IHヒーターの原理)
※変圧器の鉄心などではこの現象の発生を抑えるため、抵抗値の高い薄い珪素鋼鈑などを絶縁し積層して使用する。
発電
・導体が磁界の中で磁力線を横切るように移動すると導体には電流が流れる。
・ほとんどの電力は発電機によって作られる。発電機の原理を下図に示す。
・画面の手前から奥に細長く伸びた1本の導体(○)が矢印の様に回転すると、
a)茶色と緑の位置では磁力線と縦に交差しているため磁力線を横切った形にならず起電力は発生しない。
b)赤と青の位置では横切る磁力線数が最大となるため起電力は最大となる。
①直流発電機では、ブラシと整流子によって整流し、直流に
変換している。
②三相発電機は3組の導体が円周の1/3(120度)置きに配置
されて回転する。
※実際の導体は、1本の導体ではなくコイル状になっている。
交流の波高値、平均値、実効値
前項の発電機でもわかるように、単相交流では、プラスとマイナスが交互に発生する。
・交流の大きさは 下図Aの様に、波高値と同じ長さの青い棒が一端を中心にして回転している様に考える。
・この青い棒の先端から水平の線までの高さがその時点の交流の大きさになる。
・青い棒が同じ速度で回転するとすれば図Bのような波形の交流が出力される。この波形を正弦波という。
・三相の場合は、この棒が3本、円周の1/3(120度)おきに配置されて回転すると考える。
・この波形の大きさを表す場合次の様な呼び方がある。
①波高値 : 波の最大高値
②実効値 : 抵抗に電流を流した時、発熱量が純粋な直流と同じになる値
③平均値 : 瞬時値を平均した値
図A
図B
実効値=波高値/√2 :波高値の0.707倍
平均値=波高値×(2/π):波高値の0.637倍
※直流では平均値、交流では実効値を用いる。
(交流を単に整流した直流の場合は脈流であるため注意が必要)
※赤、緑、青の3本の相(単相が3本)で3相を構成する。
この3本の相は位相(時間的変化)が120度異なる。
電気の単位
電気にはさまざまな単位がある。主な単位を次表に示す。 ()内はそれを表わす記号
名称 | 記号 | 読み方 | 記事 |
電圧(V) | V | ボルト | |
電流 ( I ) | A | アンペア | |
インピーダンス(Z) | Ω | オーム | R+C+L |
皮相電力 | VA | ブイエー | 見掛けの電力 |
有効電力 | W | ワット | 役に立つ電力 |
無効電力 | VAR | バール | 無駄な電力 |
名称 | 記号 | 読み方 | 記事 |
レジスタンス(R) | Ω | オーム | 抵抗器 |
インダクタンス(L) | H | ヘンリー | コイル |
キャパシタンス(C) | F | ファラッド | コンデンサ |
電力量 | WH | ワットアワー | |
周波数 | Hz | ヘルツ | |
単位に付ける倍数
・電気の単位は、その種類によって数値に大きな開きがあるため、10の乗数倍を表す記号をつけて使用する。
例えば基本単位に比べて抵抗は1、キャパシタンスは単位の1兆分の1、インダクタンスは1,000分の1などになる。
・倍数は単位の前に付けて使用する(例:μF → マイクロ ファラッド)
10乗 | 記号 | 読み | 備考 |
18 | E | エクサ | ほとんど使わない |
15 | P | ペタ | ほとんど使わない |
12 | T | テラ | |
9 | G | ギガ | |
6 | M | メガ | |
3 | k | キロ | |
2 | h | ヘクト | あまり使わない |
1 | Da | デカ | ほとんど使わない |
10乗 | 記号 | 読み | 備考 |
-18 | a | アト | ほとんど使わない |
-15 | f | フェトム | ほとんど使わない |
-12 | p | ピコ | |
-9 | n | ナノ | |
-6 | μ | マイクロ | |
-3 | m | ミリ | |
-2 | c | センチ | |
-1 | d | デシ | ほとんど使わない |
※ 上表で10乗数は10の何乗かを示す。 例 10の3乗は 10×10×10=1000(10を3回掛ける)
※ マイナス何乗は10の何乗分の1かを表す。 例 10の-2乗は 1/102 (10の2乗分の1)
※ 尚 10のゼロ乗は1である。
温度
①温度の単位は ℃(ド シー:セルシウス温度) または °K(ド ケー:ケルビン温度:約-273℃)
②あらゆる電気器具は熱を発生する。
・絶対零度(0 °K)でない限り、あらゆるものに電気抵抗がある。(超伝導材料を除く)
・接触部分には接触抵抗がある。
・電流が流れた場合、抵抗や各種の損失により熱が発生し温度が上がる。→ 極端な場合は赤熱→焼損
・普通の金属では、温度が高くなるほど電気抵抗が大きくなる。
③電気器具の特性は、温度で変化する。
・温度によって使用している材料の特性が変化する。
・高温や低温になると弱くなる(軟化する、痩せる:低温ではもろくなる)
・高温では、酸化する、膨張する、化学変化が活発になる。低温では収縮する。
・温度が上がると油は粘度が下がる(サラサラになる)。低温では逆になる など。
・MCCBやサーマルリレーが小さい電流でトリップする → バイメタルを使っている。
・MCCBのトリップ時間が早くなる →内部で遅延動作のためのシリコンオイルの粘度が変わる。
・リレー、電磁接触器などのコイルの抵抗が高くなって動作しにくくなる。
※ 器具の回りの温度(盤内の温度)が影響する。
※ 電気器具は、定められた温度範囲で正常に動作するように作られている。
導体、半導体、絶縁体の違い
電流の通りやすさによって、電流の通りやすいものから次の様に分類される。
導体 ⇔ 半導体 ⇔ 絶縁体 (境目は、はっきりしない)
①導体のなかで特に電気を通しやすいものを良導体(導体)と呼ぶ(一般の金属類)
銀が最も抵抗が小さく次に 銅、金、アルミ、鉄である。
②電気をほとんど通さないものを絶縁体と言う(プラスチック、ゴム、磁器など)
③条件次第で①の性質を示したり②の性質を示したりするものを半導体と言う。ただし導体よりはるかに抵抗が高い
紙 や 水 も 絶 縁 物 ?
・紙、綿、絹などの繊維も水分が少なければ低い電圧では絶縁物である。
※昭和40年ごろまで紙巻、綿巻、絹巻のコイル用の線が使用されていた。
・電気が通り易いと思われている水も「純水」では高耐圧の絶縁性がある。
※昔、富士電機が水遮断器を製造していた。
・空気も高圧では大きな耐圧がある。→ 空気遮断器
・真空状態も高真空では大きな耐圧がある。→真空遮断器
〒992-0324
山形県東置賜郡高畠町入生田46-1
営業時間 8:30-17:30(土・日・祝日除く)