技術資料(4)
電線の許容電流
・「電流による電線の発熱」と「電線表面からの放熱」が平衡した時の「導体の温度」が「絶縁被覆の許容温度」(以下)になる
最大の電流値を「電線の許容電流」と言う(一般知識(3)- 61項参照)
◆許容電流は、「電気設備技術基準の解釈172条」に定められた方法で計算する。(内線規定も同様の値、方法である)
※許容電流の計算は電線工業会の技術資料にもあるが、長年の実績を持った上記の計算方法に従った。また、公称断面積は
「電気設備技術基準の解釈172条172-1表」の最小のサイズとした。
・許容電流は基本の許容電流を次式によって補正して求める。

基本許容電流 :周囲温度30℃ 碍子引き ビニル電線の許容電流
低減係数 :碍子引き=1 電線管3本以下又は金属ダクト=0.7
絶縁物の最高許容温度 IV:60℃ HIV・ポリエチレン(EM-IEなど):75℃ EPゴム:80℃ 架橋ポリエチレン:90℃
※LMFCやMLFCなどのポリエチレン系の電線の最高許容温度はメーカー値では105℃~110℃であるが、器具、結束バンド、端末ビニールキャップの許容温度や劣化、短絡時の温度上昇などを考慮すると現状では90℃が妥当と考えられる。
※規格から言えば周囲温度40℃+盤内温度上昇値(自然換気で10から15℃)の状態で、束線状態や絶縁ダクトなどの
低減係数を掛けて求めるべきであるが、実際的でないため、年間平均温度を30℃として周囲温度とした。
・表の計算値は上式の√部分の結果を小数点第三位で四捨五入し、結果の電流値を7捨8入した。(内線規定の計算方法)
・KVの許容電流値は規定が無いので下式で0.9 Sqから順番に細い方へ算出した。
※調査したHPでは0.2Sq~0.75で3A、4A、7Aと記載したものもあるが、IVに比べて許容電流が小さく、他のサイズとの
統一性が無くなる為、盤では用いなかった(使用条件に違いがあるものと考えられる)

Ib:求める電線の許容電流(A)
Ia:基準となる電線の許容電流(A)
Rb:求める電線の直流抵抗(Ω)
Ra:基準となる電線の直流抵抗(Ω)
この式は 放熱量は電線の仕上り外径に比例し、発熱量はI2Rに比例するものとして求めた。
・三本束は、電線外周の1/6が放熱しないとして(360度-60度)/360 ≒ 0.83 とした。
◎今後の動向
※JISではIECとの整合が行われ従来品とIEC適合品の二本立てとなり顧客よって使用する電線が異なる傾向にある。
※エコタイプ(記号 EM-:処分時の環境対策品。主にポリエチレン系)の電線を使用するように求められることが多くなる。

注) 1.※印はJIS規格外 ◇印はKVまたはH-KVの値 網掛けは三菱電機技術資料導体抵抗はΩ/km
2.制御盤内では周囲温度30℃、金属ダクト配線の値を使用する(30℃ 電線管3本以下の値は、民間盤で使用実績多数)
3.特に条件が厳しい場合は、周囲温度40℃で配線状態に合わせて選択するのが良いと考えられる。
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